数多くのテレビ番組や舞台を手がけている人気脚本家、田中大祐によるコメディ『素敵なカミングアウト』は妻に先立たれた父親が、4人の兄妹を前にしてのカミングアウトが大騒動を巻き起こす物語。客席からの笑いが止まらないというこの作品に、韓国のダンス&ヴォーカルユニットBOYFRIENDで活躍し日韓双方で大人気を博したヨンミンとクァンミンが出演する。ヨンミンは既に舞台俳優としてのキャリアをスタートさせているが、双子の弟クァンミンは初舞台。
そんな記念すべき舞台に、元ムエタイ世界チャンピオン、キックボクシング日本チャンピオンという異色の経歴を持つ武田幸三。独特の雰囲気を持ったピン芸人として人気の藤堂雄太(ゆってぃ)。劇団ウルトラマンションの中心的な俳優である藤田幸哉。新選組リアンのメンバーとしてデビュー、その後は舞台俳優として活動する森公平。元AKB48で活躍し卒業後は舞台やテレビで活躍する橋本耀。数多くのミュージカルに出演しているRilika。いい男の新基準 “パフェ男”を探すBoysAward Auditionでファイナリストになったことをきっかけにデビュー、イケメン俳優として活躍する原田桂佑と実に多彩でヴァラエティに富んだ経歴を持ったキャストが大集結した。
――― この舞台『素敵なカミングアウト』。なんと言っても一番の話題は人気グループ、BOYFRIENDのメンバーとして人気を博したヨンミン、クァンミンの二人が揃って出演することだと思います。ヨンミンさんは既に舞台経験はありますが、続いての出演をひかえての心境を教えてください。
ヨンミン「前作に続いて日本の舞台に立てることを深く感謝しています。稽古も真っ最中ですが凄く楽しく進めていますし、シナリオをもらって読んだ時に、凄く面白い作品だと思いました。もう一回り成長した姿と完璧なステージをお届けしたいです」
――― そして双子の弟さんになるクァンミンさんはこれが初舞台ですね。どんな気持ちですか?
クァンミン「お芝居の舞台に立つこと時代が初めてですが、引き受けたのは挑戦する気持ちがあったからです。でも他の俳優さん達は皆さん凄く楽しい人で、いろいろと助けてもらっています。だいたい僕が不安な顔をしたり緊張を表に出す時には、皆さん凄く心配していると思いますよ」
――― ともかく人気の双子が共演するとあって、ファンは騒然ですが、お互いにどんな心境でしょう。
ヨンミン「当初は凄く心配していました。僕自身も舞台はまだ三回目ですしね。でもクァンミンのことを考えると、僕が引っ張っていかないといけないな、という気持ちにもなりました。ところが彼は思った以上によくやってくれています。これは有り難いですね」
クァンミン「ヨンミンは日本の舞台経験がありますから、僕は彼を信じてついていくことにしました。今はともかく周りの皆さんに迷惑をかけないように、一生懸命頑張っています」
ヨンミン「でも本当に想像以上に頑張るので、ちょっと不思議な気持ちでもありますよ」
クァンミン「うれしいなあ。ともかく僕はヨンミンとか皆から学ぶだけです。気合い入ってます!」
――― ところでお二人の性格は似ている方ですか?それとも違う方ですか?どんなご兄弟でしょう。
ヨンミン「性格から色々な部分まで、全く違いますね。でもBOYFRIENDで一緒に踊っていた頃、不思議なことに同じところで間違えたりしました。おかしいですね」
――― 双子だと、お互い自分がヨンミンだかクァンミンだか解らなくなることはないですか?(笑)
クァンミン「えーー? そんなことはないですよー(笑)」
ヨンミン「でも赤ん坊の頃の写真をみると、ちょっと混乱しますね(笑)」
――― それでは二人を囲む皆さんはどんな役作りをされているか、教えてください。まずは女優陣から。
橋本「私は綺麗系お嬢様の役なんですが、普段の私は全くそういった部分がないので(笑)。話し方とか仕草とか、役に合ったものを本番までに身につけようと思ってます」
Rilika「苫米地家の長女役ですが、4人兄弟という大家族で兄弟に女性は私一人という設定なんですね。私自身は二人姉妹で姉が居るだけなので、こういった大家族の経験はありません。だからちょっと感慨深く稽古の日々を送ってます。同じ家族愛でも男性と女性ではちょっと違ってくると思うんですね。だからそこのところを上手く出せたらと思ってます」
――― それではカミングアウトをする父親、武田さん。
武田「いままでボディーガードかヤクザの役ばかりですが、今回は念願のゲイ役です(笑)。決まってからゲイの知り合いに話を聞いたんですが、皆さん色々な指向があるそうなんですね。だからこの苫米地家のお父さんはいったいどういった方向なのか悩みました。僕個人は相手が男なんて、と日頃は思っているんですけれど、役に入ったヨンミンは凄く綺麗で可愛いですね(笑)。そういえば僕はムエタイをやっていたので良くタイに行っていたんだけど、今までの人生で一番綺麗だと思ったのはタイ人とフランス人のハーフのゲイでした。もうお人形さんみたいでね」
――― 長男の道彦役はダブルキャストですね。
藤田「ええ、僕とゆってぃさんだけWキャストです。だからゆってぃさんがどんな役作りをしてくるか次第で違いを出したいと思います。この長男の道彦は真面目でおそらく家族の中で一番家族愛に溢れる男なのですが、ちょっとした勘違いで崩れていきます。まあ台本に忠実にゆってぃさんに流されないようにしたいと」
ゆってぃ「道彦・・・・・・一体どういう人なんですかね(笑)。僕もまだ把握できていなくて。そもそも僕だってお芝居の舞台は初めてなんですよ。まずこんなに台詞が多いとは思いませんでした。この前友達との待ち合わせ30分前に、もらった台本の自分の台詞のところに線引いてからいこうと思ったら、1時間くらいかかりましたから(笑)まずそこで心が一回折れてます。だってピン芸人ですから。他人が作った台本を憶えることはあまりしないので。そこから苦難です。さらに皆さんと一緒にやることもないので今だに調和の取り方が把握できてないです」
――― Wキャストだとお互いに意識してますか?
ゆってぃ「僕は藤田さんにお願いしているのは、台詞を憶えるなということで」
――― というと?
藤田「僕が台詞を練習していると、横に来て『おい、憶えるなよ』って言いに来る」
ゆってぃ「ともかく僕より早く憶えて欲しくないんですよ。もうそんなせめぎ合いです。安心が欲しいんですよ。何だったらこの先一切しないで本番に望んで欲しいくらいで」
藤田「できるわけないでしょ、そんなこと(笑)」
――― でもピン芸人のステージは究極のワン・シチュエーションみたいなものでしょう?
ゆってぃ「でも相手も居ないですから。今回は相手役もいるから僕が台詞を間違えたらもう台無しなわけですから。気持ちは台本を憶えようと思っています」
――― 続いて次男の次郎役は・・・・・・森さん。
森「この苫米地家のメンバーは人生の中でそれぞれ好きなことをして生きているんです。その中で唯一不本意な道を進まされるのが次男の次郎ですね。お兄ちゃんが高校教師になったので、仕方なく父親の跡継ぎとして会社を引き受けるという。だから自由な皆さんに振り回される役どころです。この際思い切り振り回されて、その中で感じたものを表現しようと思います」
――― 最後は三男。つまり末っ子ですね。原田さん。
原田「はい、僕が演じる重彦は末っ子で、何も深いことを考えていなくて、いい加減な役柄ですが、現実の僕は男三兄弟の長男なんです。だから重彦の人物像を考えているうちに、弟の三男を思い出して作っています。僕としては道彦、次郎という二人の兄の気持ちの方がよくわかりますけど。ともかくそんな状況で三男といういい加減な馬鹿野郎を楽しくやらせてもらってます」
――― 皆さんの経歴や個性が多彩すぎて、もうそれだけでどんなことになるか楽しみです。せっかくなのでタイトルに因んで皆さんにカミングアウトをしてもらいたいと思うのですが、お題は「嫌いな食べ物」でいかがでしょう。
橋本「大きく切られた生のニンジンがダメです」
Rilika「私は牛乳です。乳製品ならいいんですが、産地直送バニラとかもですね」
――― 意外ですね。武田さんが生乳ソフトクリーム好きだと言ったら驚きますけど。
武田「え? 大好きですよ(笑)。スポーツ選手って意外と甘いものは好きなんです。ダメなのはササミ」
――― え?だってアスリートは好んで食べるじゃないですか。
武田「そうですよ。でも18年ササミが主食でしたから、もういやですね。あの頃は食を楽しめなかったんです」
――― ヨンミンさん、クァンミンさんは? 日本の食べ物は問題ないですか?
クァンミン「日本の食べ物は全部好きですね。ただ韓国のホンオフェ(エイを発酵させた韓国の郷土料理)がダメです。アンモニア臭がするので」
ヨンミン「美味しいんですよ。僕は大丈夫。ダメなのは豆腐ですね。絹ならいいのですが木綿豆腐は苦手」
クァンミン「僕は凄く好きです。ね、正反対でしょ」
――― では最後に読者へのメッセージをお願いします!
ヨンミン「沢山の人に愛してもらえる、とても面白くて素敵な舞台ですので、皆さん是非お越しください」
クァンミン「俳優陣とスタッフの皆さんが力を貸してくれたこの作品で、一人の俳優として頑張りますので、ぜひ観にきてください」
橋本「お父さんがゲイだとカミングアウトするという、なかなかの状況で進められるファミリーコメディです。一回だけで無く何回も来て頂いて、キャストそれぞれの表情なども楽しんで欲しいです」
Rilika「どのシーンをとっても爆笑できる要素がありますし、それもまた日によって変化するし、きっとハプニングもあると思います。そうしたことを皆さんと共有したいです」
武田「えー、ぼくとヨンミンのLOVEをお楽しみに(笑)」
藤田「観終わった後に、自分もカミングアウトしたくなるような、そんな舞台にしたいと思います」
ゆってぃ「みなさん楽しいメンバーなので、きっといい舞台を届けられると思いますが・・・・・・僕をあんまり見ないでください。緊張しますから(笑)」
森「状況がどんどん変化するのですが、その変化する空気感を皆で楽しめれば良いなあと思います」
原田「家族の物語なので、自分や家族に当てはめてみたりすると凄く共感できると思います。思い切り笑ってください」
――― 皆さん、ありがとうございました。
(取材・文&撮影:渡部晋也)