どこにでもある平凡な家族。大人になりバラバラになった兄弟たちが、母の死を機に一堂に会する。有村藍里が演じるのは一人だけ家族と血が繋がっていない末っ子。「彼女の孤独がどこか自分と重なる」と語るその姿からは、静かな決意が滲み出ていた。
顔合わせを終えて
――― 顔合わせを終えて、キャストのみなさんにどんな印象をお持ちになりましたか?
「皆さん明るくて元気一杯な感じがして、いいなあと思いました。わたしは来年30になるんですけれども、家族で一番末っ子の高校生役ということでかなり難しいなという印象があって(笑)でも、実際みなさんお兄ちゃん、お姉ちゃんみたいな感じの方々だったので、役になりきれそうかなと思います」
「孤独」なところが自分と似ている
――― 今回演じる役はどんな役ですか?
「わたしが演じる塩谷小鳥は、家族の中で一人だけ血が繋がっていない養子。だからいつも何となく孤独を感じています。お母さんも本当のお母さんではないけれど、すごく大好きでずっと一緒にいて、その大切なお母さんが亡くなってしまい本当に一人ぼっちになってしまった。わたしは家族はいるんですけど、学生の時は学校が楽しくなかったし、友達もいなかったし、そういう孤独なところがすごく自分に似てるなと思いました。本当はそんなことないのに、自分は一人だって思い込んで殻に閉じこもってしまうところがあるというか。わたしも、そういう自分がすごく嫌だったので、その殻を破りたくて芸能界のお仕事にチャレンジしようと決めましたので。今は引きこもって家にいたときよりはかなり変われたんじゃないかなと思いますけど、でもまだまだですね。まだちょっと時間がかかりそうです」
――― どんなところを大切に演じたいと思いますか?
「小鳥は、お母さんだけが唯一自分の大切な人だと思って生きてきました。だから何気ない会話の裏にも、お母さんが死んじゃったんだっていう思いが常にあるんです。お母さんが亡くなってしまった、大切な人がいなくなってしまったっていう悲しみはずっと忘れずに背負っていようと思っています」
舞台は自由になれる場所
――― 今回、初主演ということですが。
「かなりの挑戦です。ただでさえ、人より飲み込むのが遅いので、みなさんの足を引っ張らないように、今まで以上に頑張らないと!って思っています。まだまだ実感が湧きませんが、今日みんなで初めて本読みをして何となく見えてきました。台本を読んだ時は、お葬式の話なのでもっと粛々と淡々と暗い感じで進んで行くのかなと思っていたんですけど、意外とコントっぽいやりとりがあったり、コミカルなキャラクターのお兄ちゃんやお姉ちゃんとの掛け合いがあったりするので、実際本読みをしてみてイメージが変わりました」
――― 舞台は、有村さんにとってどんな場所ですか?
「普段大きく感情を出すみたいなことがあまりないのですが、舞台だとその役になりきって、怒ったり泣いたり、ちょっとツンケンしてみたりとか、色んな自分を出せるので、すごく楽しいです。わたしはよく人から大人しそうだねって言われるんです。自分ではそうでもないのになって思うんですけど、でも、そう思われてるからそうしなきゃいけないのかなみたいに思ってるところもあるので、舞台だとそこからちょっと解放される感じはありますね」
新しく生まれ変わった自分として挑戦したい
――― 今回、楽しみにされていることを教えてください。
「このお話は、一応みんな兄弟だけど、最初はみんなバラバラ、でも最後は本当の家族になる。その過程が稽古期間中にも味わえたらなと。舞台の最後は家族みたいに仲良くなれたらいいなと思います。今はまだちょっと人見知りして、あまりみなさんと話せてないですけど(笑)普段お芝居をしてても、照れ臭さみたいなものがあったりするんです。人の目を気にしてしまうというか。今回は、そういう人の目を気にする自分じゃなくなりたいなと思います。新しく生まれ変わった自分として、挑戦したいです」
(取材・文:前田有貴 撮影:平賀正明)