2017年、18年と上演され、闘う執事と激しいアクションが魅力の人気作品、通称“バトバト”。シリーズ3作目では初演に出演した鵜飼主水とシリーズ皆勤の阿佐美貴士をW主演に迎え、yoppy project last produce stageとして最後の闘いを描く。高士幸也演じる新キャラクターは善か悪か!?
それぞれの成長物語にしたい
中島「この作品はボディーガードや執事に近しい人間たちが誰かを守るために闘う物語で、闘いを通して成長し色々な友情が育まれ、いがみ合っていた存在たちが最終的には和解して何かを得て、それぞれの生活に戻って行った…というお話でした。
今回はBattleButlerをモチーフに囚人とダメなお嬢様・お金持ちのボンボン達を教育する更生プログラム。更生施設を舞台に囚人という設定の人たちが闘うお話になります。
それぞれの成長物語にしたいです。なぜ闘い始めたのか、なぜ守るのか。忘れていたもの、きっかけを掘り下げていけたら」
鵜飼「バトバトはすごく思い入れの深い作品で、なんせ一度共演した女優のyoppyが独りでプロデュースをし舞台をやりたいと、プロデューサーとしての初めての公演だったし、何度か大地とも仕事をしていて、俺は大地のエンタメのお芝居が大好きで、その二人が掛け合わさったらどんな世界になるんだろうとワクワクして入ったのが初演の時です。
BattleButlerの面白いところはやはりご主人様がいて執事がいるという二人の信頼関係や、 必ず“対(つい)”で見せる、誰かのために行動しあう二人を見せる舞台で、すごく熱のある作品でした。それだけ熱を入れて作った松風というキャラクターの過去を知ることが僕は楽しみですし、最初と最後に関われることはとても光栄です。初演を見ていなかった人が後悔するくらいしっかり見せていけたら」
阿佐美「僕はシリーズ出演皆勤で3回目となり、前回と同じ役の一条を演じます。彼は僕にないクールな役どころで。バトバトは僕もものすごく思い入れがありまして、東京に来て初舞台だったんです。2回目で殺陣の振り付けをさせて頂いて、3回目で W主演の一人となりました。節目節目にこの作品に携わり回を追うごとにレベルアップしています(笑)この作品があったから東京で今活動できていると思っていますし、大地さんとyoppyさんに出会ったきっかけでもあり、いろんな想いが詰まった作品なので頑張ります」
――― 今作では中島さんが殺陣をつけますが、 殺陣が得意な2人がW主演でかなりハイレベルになりそうですね。
鵜飼「バトバトの殺陣は長いんですよ!初演の時は本当にしんどくて、これはほぼクレームです」(爆笑)
中島「これはつけた僕もそう思います。自分でも闘ってみておかしいんじゃないかと(笑)でも人が極限まで行くと良い顔してるんですよね」
鵜飼「もうハラスメントですよ(全員爆笑)まあ、やりたいことはわかっちゃうからね」
――― 中島さんの注文には答えてしまうと。
中島「答えるというよりは、そう言いながら自分たちでここはこうする?とか増やしてますからね。2人ともアクションをつけることができるので、殺陣を考えて現場でやるのではなくて、ここは何手で入れ替わって欲しいと言うと、そっちで激しく出来上がって行くんです。 なので今回もそうなると思います」
鵜飼「大地のやり方は実はやりやすいんですよ。自分の体のクセの通りに動かせるので。振付師さんがいるとどうしても振付師さんのクセで動くので、自分と重心が違って難しかったりしますが、任せてくれるのでやりやすい分どんどんスピードも上がっていった上に手がたされ、一度4分間殺陣が続くという事態が…」
――― 酸欠になりませんか?
中島「酸欠です!」
阿佐美「でもそれが中日超えたくらいから気持ちよくなってくるんですよ」(全員爆笑)
鵜飼「言いたいことわかるけどね」
――― ゾーンに入ってしまうんですね。
鵜飼「俺は逆に初日のスピードを維持できるか、日を追うごとに緊張しちゃうんです」
悪玉か善玉か最後まで正体がわからないキャラクター
――― 本シリーズで初めて出演する高士幸也は流川役を演じる。阿佐美演じる一条がなぜ犯罪を犯してきたのか、なぜ情に熱いのか。いいやつかもしれないという雰囲気を放つのは、きっとその時誰かが隣にいたからだという。一条という存在に大きく影響したのが流川、新キャラクターに期待が膨らむ。
ずっと黙って受け止めていらっしゃる高士さんですが。
高士「もうどうしましょう(笑)。流川は一条にとってはキーパーソンになります。
主水くんとは面識があり、主水くんとこんなに早く舞台で共演できると思っていなくて初共演は嬉しいです。しかもW主演の2人に関わる大事な役をいただきまして、今はすごく楽しみでいっぱいですね」
中島「この2人に影響を与えたという役になります」
――― 物語は3年後ですが、過去としてはどれくらいさかのぼるのでしょうか?
中島「けっこう前ですね。松風はもともと警察官で刑事部に配属された頃のイケイケ時代、一条と流川は十代でハングレ集団みたいな頃に実は接点があった。そしてそれぞれの相方との出会いの過去も描きます」
阿佐美「面白そう!」
鵜飼「なぜ警官がアイドルのリンちゃんと出会うのか!」
――― 彼らをどう演出していこうと?
中島「2人は一度演じている役なので、感覚さえ思い出してくれれば別に心配はしていません。今回は今まで接点がなかった高士くんがどれだけ振り切って王子様をやれるのか楽しみですね!」
高士「(笑)。王子様のような役だそうです」
中島「2面性があり、裏と表をしっかり表現してどれだけ悪い顔ができるのか。そしてどれだけ素敵な笑顔ができるのかという、ふり幅が必要になってくると思います」
高士「めっちゃ楽しみです!悪玉か善玉か最後まで正体がわからないキャラクターらしいです」
鵜飼「またクレームで申し訳ないんだけど、俺の武器はナイフで二刀流でしょ。でも一条の武器は拳銃なんですよ。無理ぞ」
中島「でも一条の銃はあたらない設定で、それはワザとなのか何なのか?」
高士「僕はナイフと銃が武器になります」
鵜飼「えーそれはズルい!俺も銃がいい!」
――― 他の皆さんも武器があるわけですね。
中島「あります。火炎放射器や日本刀とか(笑)前職に関わる武器を持っています」
バトバトってスポーツ
――― ガチの殺陣と武器の闘い、関係性など見どころ満載ですね。
中島「なぜこの人たちは守り初めて、何のために闘うのか。
僕はエンターテインメントのアクションをやる時は、ボクシングをやりたいんです。ボクシングは見ていると熱くなりますよね、きれいすぎる闘いというよりは肉弾戦。その距離感でアクションをやらせてしまうがために演者の手かずが多くなってしまうと」
――― 体力勝負なところもありますね。
中島「主演の2人のガチバトルは見どころです。あとは過去パートだけの登場人物もいるので、殺陣がある執事だけではなく他の出演者たちにも注目してください。そしてこの作品の魅力はスピード感だと思っているので、それは失わずにできたら」
――― みなさんから高士さんへ、バトバトについての心得などアドバイスがあれば。
鵜飼「念のために保険には入っておいた方がいいかも」(全員爆笑)
高士「ガチですね」
阿佐美「大地さんは場合によっては怖いかもしれないです」
高士「ポジティブなものが何もないですね(笑)」
中島「体育会系です」
鵜飼「バトバトってスポーツなのよ。自分でケアして大事にして行かないと」
高士「保険には入っておきます!稽古場では無理をせずに(笑)」
――― 最後に意気込みをお願いします。
鵜飼「2020年はじめの舞台がW主演ということで、主演を演じるのは退団してしまった自劇団の2018年3月頃の舞台ぶりです。自分自身はこの作品に期待しているところがたくさんあります。その期待はもちろんyoppy最後のプロデュースということで、華やかにみんなが笑顔になって終われる舞台にしたいと思うのはもちろんのこと、2019年に経験してきたことや、バトバトの前に演出をすることによって自分が座組にどんな影響を与えられるのか、自分がどのくらい変わっているか指針にもなりそうです。
このような環境に置かせてもらえることで自分を応援してくださる方は僕にも期待してくださる。その期待を上回って、最後は楽しく笑顔になれるような舞台を作れるように精一杯努めようと思っています」
阿佐美「BattleButlerはじめ大地さんの作品が凄く好きでたくさん出演していますが、大地さんの作品はとても泥臭くて漢くさい。暑苦しいけれどもyoppyさんが関わることによって繊細で綺麗になって、女性にも受け入れられる作品になるんです。
男女問わず好きになれる作品です。今回でyoppyプロジェクトがひと区切りを迎えますが、絶対面白い作品になると思います。yoppyさんがまたやりたいと思うような素敵な作品を作りたいと思っています」
高士「このシリーズに今回初めて参加させていただきますが、もともとシリーズに登場するキャラクターの過去に関係しているキャラクターを演じます。自分が入ることで違う風を入れ、作品の中に入っていけたらいいなと思っています。何より早く皆さんとお芝居がしたいです。精一杯頑張ります」
中島「自分が作る作品には妥協したくなくて泥臭さは僕の売りだと思っています。さっき阿佐美が言ってくれましたが、yoppyプロジェクトは僕とは真逆な演出なんです。僕は素舞台が究極の舞台と思っている人間なんですが、これをやりたい、あれを取り入れたいと多くの意見が出てきます。それを生かした結果、お客様に受け入れられたということでこのコラボは間違いなく自信になりました。今作ではみんなで大きな花を咲かせて、僕自身妥協せずお客様も熱い視線で見届けていただければ。劇場でお待ちしております」
(取材・文&撮影:谷中理音)