劇団6番シードの看板女優、宇田川美樹プロデュースによる人気女優演劇ユニット「UDA☆MAP」。夏の風物詩ともなっている上質でグズグズのシチュエーションコメディーを手がけてきたが、真冬の最新作は遥かな未来を舞台にしたハードボイルド・サスペンスだ。「最後の大戦」によって大部分が砂漠化した地球。生き残った人類が暮らす大規模オアシス「カイロ」で殺人事件が発生した。事件の解決へ乗り出した2人の特使だが、捜査を進めるうちに、ある秘密にたどり着く……主演の栞菜、小林亜実、そして演出を手がける松本陽一(劇団6番シード)に本作にかける意気込みを聞いた。
これまでとは真逆の舞台をやりたかった
――― 新作は夏のUDA☆MAPとは系統の違う作品になりますね。
松本「毎年夏の恒例として、ずっとグズグズのコメディーをやってきたので、今度はグズグズでない真逆な舞台をやりたいと思ったのがスタートラインです。今までは必ず男性を1人、2人入れていたのですが、今回は全員女性で、女性のカッコよさが前面に出るようなハードボイルド系の芝居ができたらいいなというのがプロデュースの宇田川美樹のコンセプトです。洋画ドラマみたいな世界観が特徴の細川博司さん(バンタムクラスステージ)の作品に、女優だけで臨んだら楽しいだろうなと思ってずっと構想を練っていたようで、オールキャストが女性というのは初の試みで、タイトルも『UDA☆MAP NEXT』にしています」
栞菜「前回のUDA☆MAPにも出演させてもらって、美樹さんから声をかけて頂きました。がっつりハードボイルド作品への出演は初めてで、アクションもあると聞いているので、すこしビビッています(笑)。細川さんの作品は以前にも出演したことがあるのですが、ダンディーな俳優さんを起用するイメージがあるので、今回女性だけでどれだけカッコよく出来るかが楽しみです。
大規模オアシス『カイロ』で殺人事件を調査するべく、『人類文化存続管理大寺院』から派遣される特使の芥(あくた)ミネルヴァを演じますが、衝撃波で敵を攻撃する術を持っているらしいので、どんな感じになるのでしょう。見る限り、世界観が壮大なので、今から楽しみです」
小林「私は『地球環境再生教会』から派遣される特使、乾(イヌイ)ディーヴァを演じます。芥ミネルヴァと同じく殺人事件を捜査するもう1人の主人公で、分かりやすく言えば、宗教観が違う組織といったところでしょうか。考え方が違うので、ぶつかりあいながらも、協力して捜査を進めていく展開です。
今回、UDA☆MAPさんへの出演は初めてですが、出演経験のある仲の良い女優さんから『お客さんの反応が凄くて、やっていても楽しく充実感がある』と聞いて自分も是非!と思っていたので、念願が叶いました。それも今回初のハードボイルドという新しい挑戦に加えて頂くのは大変光栄です。私の銃の扱いが得意という設定なので、宇田川美樹さんに一から教えてもらうつもりです」
映画『ブレードランナー』のダウンタウン
――― どの様な世界観になるのでしょうか?
松本「女性×ハードボイルドの掛け算が今から楽しみですね。ハードボイルドという世界観の中で一般的な女性の色気とはまた違った魅力が出てくるような気がします。細川さんの脚本は映像的なので、舞台でどう表現させるのかは腕の見せ所になりますね。新たな試みとしては、舞台上を水でビチョビチョにしてやりたいなと(笑)。一度、却下された経緯があるので、なんとか実現させたいなと思っています。
イメージ的には映画『ブレードランナー』のネオン輝く、湿っぽいダウンタウンの感じです。そういう奇抜な事をやってみたいですね。あとは舞台上をバイクで走るとか。色んなチャレンジはしていきたいと思っていますが、どれだけ実現できるか・・・。
でもシリアスだけでなく、会話の中にコメディーの要素も入れてみようと思っています。
ぶっとんだ世界観ですけども、そこに生きるのは普通の人間なので、人間ならではの面白さはふくらませたいなと。
最終的には殺人事件を介して、生き残った人類たちの根幹の謎に迫るという壮大な設定になっていますが、いつもの通り、宇田川さんも出演しますので、そこも楽しみにしていてください」
夏は恐ろしい……
――― 栞菜さんは過去2度、夏のUDA☆MAPに出演されていますが、夏の公演はどんな雰囲気ですか?
栞菜「正直、楽しみですけど怖いです!周囲に埋もれてしまいそうで。普段ヒロインをやっている女優さんが皆、『え!?そうくる??』みたいなとっておきを準備して持って、どれだけ可愛くないかを争っています。いかに自分を捨てるか勝負なので。なので、夏のUDA☆MAPは本当怖いです。イナゴの佃煮や何かの幼虫も食べさせられたので、本当にもう、こんな怖い団体はないなと」(一同爆笑)
小林「え……今回はさすがにそういうのは無いですよね!?」
松本「いやいや分からないよ。期待しているお客さんもいるはずだから(笑)」
――― 益々、公演が楽しみになってきました。最後に読者にメッセージをお願いします。
栞菜「周りの女優さんが素敵な人ばかりなので、皆さんの力を借りつつ、カッコいい舞台にしたいです。UDA☆MAPファンの方にも、初めてお芝居を見る方にも楽しんでいただけるような作品にできるように精一杯頑張ります!」
小林「プロットを見るだけでもすごくワクワクしています。この新しいチャレンジに参加させて頂いて、今後に繋がる活躍が出来たらいいなと思います! 是非劇場にお越し下さい!」
松本「未来世界で女性のハードボイルドという設定ですが、そんなにSF、SFしない作品になるのではと思っています。細川さんの独特の世界観に未来と女性を重ねたので、そこの深みやギャップが出せたらなと。そういう意味では、大人の芝居をちょっと濃い目に味付けしたいですね。そこにUDA☆MAPが持つ女性のギラギラ感を加えて、今までにないガールズ演劇をおみせしますので、是非お楽しみに」
(取材・文&撮影:小笠原大介)