原作は小説投稿サイト「小説家になろう」発の人気作品。戦国時代へと転生した歴史好きの中年サラリーマンが知識と冷静な思考で弱小領主となり戦国の世を駆け上がるドラマを描く。見かけは子供、中身はおじさんが活躍する痛快戦国サバイバル劇とは? 主演・竹若丸役の古畑恵介と、梅丸役の佑太に話を聞いた。
僕以外は戦国時代の人々、そのギャップが面白い
――― 出演が決まった時の感想や印象、意気込みをお願いします。
古畑「フリーランスになって初めてオファーをいただいた作品です。TOブックスさんの人気作にお声がけしていただいて、とても嬉しく思っていますし、大事に演じていきたいですね。原作のイスラ―フィールさんやプロデューサーさんはじめ、熱意の塊のような方々ばかりが集まっていて、その熱意に負けないようにみんなで仲良く良い作品を作れたら。時代劇は初めてですが、僕が演じる竹若丸は現代社会から転生してきたオジサンなので、セリフは現代の言葉使いですし、“セコム”とか、現代語をたくさん使うので時代劇という印象はあまりないですね」
――― では、現代のままで時代劇に入るような感じになるのでしょうか?
古畑「そうですね。声も作らずにそのままの古畑でやっていいよと言われています。僕以外の周りのキャストは戦国時代の人々なので、そのギャップが面白いと思います。ぜんぜん話が通じてない、みたいな」
佑太「そうなんです。現代用語を言い出してみんなが『え?』と固まるところが楽しいです」
古畑「時代劇ですが内容は堅くなく、とても入りやすい作品だと思います」
佑太「僕も舞台から7年くらい離れていましたので、久しぶりの舞台作品出演になります。梅丸をどう演じようか、時代背景を壊さず作っていけたら。転生って第二の人生みたいで羨ましいですよね。この頭で赤ちゃんだったら天才になれます」
古畑「男子はワクワクしますよね」
――― 好きな時代に転生できるとしたら、どの時代に行きたいですか?
古畑「少しだけ前の現代へ行きたいです。頭はそのままで同じ誕生日に生まれて天才子役としてデビューしたい(笑)」
佑太「それはすごくわかります。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』みたいに未来へ行ったり過去に行ったり、この年齢でできたら楽しいよね。特に未来へ行ってみたいです。色々好きな漫画がありまして、なかなか終わらないので終わりを見届けたいなと(笑)」
身体の表現だけではなく、心の中の微細な表現も大切に
――― とても魅力的なキャラクターばかりですが、それぞれの役を演じる上で大事にしようと思っていることはありますか?
古畑「一番初めにスタッフのみなさんとお話した時、色々と質問してくださって、その解答に応じて脚本を書いてくださっているそうです。例えば『敵がいたとして、今にも母が殺されようとしています。あなたはどうしますか?』みたいなことを聞かれて、もともと現代人なので人を殺したことがない人間が家や母を守るために人を殺す判断をしなければいけない。
これもひとつの大きなテーマだと思うので、身体の大きな表現だけではなく心の微細の表現もとても大事に、演出の西口さんといっしょに作っていきたいです。原作ものですが、原作と僕の人間性を合わせた竹若丸になっていると思います」
佑太「梅丸は朽木家の跡取りで、竹若丸の2歳上のはとこにあたる少年です。竹若丸と一緒に戦で闘いたいけれど、戦に行ってしまったら朽木家の跡取りが居なくなってしまう。行きたいけど行けない梅丸の葛藤を大事に表現していきたいです。いつも竹若丸の横にいてお世話をする役どころなので、役としても現場でも古畑くんを支えていけたら」
古畑「お芝居って普段のキャストの関係性が出ると思うので、特に今回はキャストが大勢いらっしゃるので、みんなと仲の良いカンパニーを作りたいですね」
心情や葛藤をダンスでどう表現するのか
――― 竹若丸はその天才ぶりで大人たちに影響を与えていきますね。
古畑「見ていて痛快ですよね。ただ、嫌な感じの子どもにならないようにはしたいなと思います。達観しすぎてても感情移入できないし。だから今回転生前の『俺』がいてくださっていて、俺=自分なんですけど、今回の演出としては2人一緒に出るんです。竹若丸が俺に相談するシーンもあって、自分の中なんだけど、お客様にわかりやすいようにあえてそう表現されていて、自分の中で会議しているような、そこはひとつの見どころになると思います」
佑太「今回、表現としてダンスがあると聞いていまして、時代劇をダンスでどう表現するのか挑戦になると思います。演出家の西口さんがダンサーでもあり振付もされるので、ジャジーだったり様々な表現がありそうです。梅丸は実際に戦には行けませんが、心情や葛藤をダンスでどう表現するのか楽しみです。舞台で初めてこの作品に触れる方は固い作品と思いがちだと思うので、そこをどう崩せるか。みんなにわかりやすく伝えることも挑戦ですね」
古畑「この時代をこの頭でどうやって生きぬくかがテーマなので、僕は刀ではなくそろばんで闘うキャラクター、そろばんの扱いが挑戦です(笑)。実はそろばんを使ったことがなくて、一から勉強しないと。あとは難しい言葉が多いので聞き取りやすさが重要です。何万石とか何とかの闘いとか、言うだけではお客様には伝わらないですよね。だから声優としても活動している僕をキャスティングしてくださったと聞きました。セリフの明瞭さ、伝えることを第一に舞台づくりをしていきたいです。
そして面白いのは難しい言葉だけではなくて、転生前の『俺』役が未来の言葉をその時代のものに例えたり、見る人へわかりやすく伝えるための寸劇シーンもあったり。受け取り手に優しい台本という印象があります」
僕たちがこの物語へやさしく導きます
――― 今回の舞台で楽しみにしていることはありますか?
古畑「今回の衣装なのですが、それぞれのキャラクターの個性が出ていて素敵なんです!!」
佑太「色合いでも表現しているので、わかりやすいと思います。梅丸の衣裳は原作に近く更に豪華にしていただいております!」
古畑「竹若丸は原作ではグリーンでシンプルな衣裳ですが、お殿様なので袴を金色にしてくださったり、皆さんの力でとても綺麗に仕上がっています。それぞれのビジュアルも見どころですね」
佑太「ちなみに僕は古畑くんとの共演は初めてなのですが、まずは名前をなんと呼んだらいいですか?」
古畑「ふーくんと呼んでください!」
佑太「僕は普通にユウタが多いので、ユウタで。昔はユウタ君が多かったんです。最近はユウタさんと呼ばれることが多くなって、自分では思ってもいないのですが年齢を重ねたのかちょっと色々な変化を感じます」
古畑「男って中2から変わらないですよね」
佑太「そう! だから今日もジャンプの発売日だなって思いながら歩いてた(笑)。僕は気軽に声をかけるタイプだと思います。飲みにも行きたいですし」
古畑「飲みに行かなきゃいい芝居は作れないですよ!(笑)」
佑太「大事なことですよね」
古畑「一回でめっちゃ仲良くなれるので、みんなで行きたいですね」
――― 最後にお誘いのメッセージをお願いします。
佑太「『淡海乃海(あふみのうみ)』という題名だけ覚えてもらって来ていただければ僕たちがこの物語へやさしく導きますので、身構えずに気軽に観に来てください」
古畑「歴史物が苦手な方も大丈夫、大変わかりやすい作品になっていると思います。身構えずに来て欲しいですね。この舞台を観て原作に興味を持ってもらえるような、そんな舞台にできたら。『あふみ』ファンが増えたら嬉しいです。愛される作品になるようにキャスト一同頑張って参ります。新宿村LIVEに遊びにきてください!」
(取材・文&撮影:谷中理音)