映画監督の高山直美が旗揚げした演劇と映像で活動する劇団チームエヌズ。最新作は、役者達のはじけきった演技が評価され全国の映画祭で数々の受賞をしたワンカットムービー『ここにいる』(2016)を2部構成の演劇で挟むという画期的な試みだ。茨城県の牛久沼にまつわる河童伝説をモチーフにした映画が演劇との融合でどのように進化するのか?今回唯一、映画と演劇の両方に出演するセンダ役の仙田遥平(チームエヌズ)に加え、カッパ役の西村大樹、センダの彼女稲子役の御縁明日菜に本作への意気込みを聞いた。
――― 映画と舞台の融合というユニークな着想はどこから得たのでしょうか?
高山「元々、劇団チームエヌズは演劇と映像で活動をしていこうというコンセプトにしているのですが、去年10月にカフェでいきなりお芝居が始まる挑戦的な公演をやったことで、次も変わった公演をしたいなと考えた時に、自分の映画と舞台をくっつけてみようと思ったことが始まりです。
脚本を書きたくてこの世界に入ったのですが、演劇をやっているうちに形に残る映像を作りたくなって、そのうち劇団を立ち上げるまでになったという経緯も本作に影響しているかもしれません。2016年に撮影した短編映画『ここにいる』は15分ワンカットの演劇映像コンテストの為に製作したもので、カッパ伝説が残る茨城県牛久沼の公園を訪れたときに、カッパの銅像を見てヒントを得ました。ケンカ中のカップル女性に幽体離脱をした男が乗移るというコメディで、外見は女性なのに中身が男の状態で、彼氏と会話を続ける可笑しさが楽しめる作品です。
本作の舞台前半部分では、その幽体離脱をした男がなぜ公園にいるのか?という前日譚を描きます。映画ではカッパは銅像ですが、せっかく演劇を入れるならば喋らせてしまおうということで、カッパやハトも登場してかなりカオスなイリュージョン舞台になる予定です。私の中には普段演劇を観ない方にも来て欲しいという思いがあって、YouTubeを通した情報発信も1つの試みであり、映画好きな方にも演劇に興味を持ってもらいたいという意図も込められています」
――― 映像と生の芝居の境界線については?
高山「お客さんがどう判断するかにもよりますが、ストーリーが繋がっていれば1つの世界観として感じられるのではないかと思います。映画、ネット、お芝居もミックスすることはチャレンジではありますが、今までみたことのないスタイルの舞台をきっとお客さんにも楽しんでもらえるのではないかと思います」
――― 今回、チームエヌズに初出演されるお二方はどんな印象をお持ちですか?
御縁「SNSでこの作品のオーディションを知った時に絶対面白いなと思って勢いで応募しました。2.5次元舞台など凝った演出の舞台が多い中で、そういった物を全部取っ払ったこれが演劇!という印象ですね。舞台では乗移られるカップルの彼女を演じるので、途中で男口調になります。でも実際に男兄弟に囲まれて育ってので、そこは違和感なくできるのではないかと。映画の話をどう膨らませられるのかが楽しみであり、腕の見せ所ですね」
西村「今回は舞台で映画をサンドイッチするので、映像に向けてと映像を受けての2通りの芝居が求められると思っています。これは今まで経験したことがないので楽しみですね。映画にも出てくるカッパの弟役(映画では銅像)を演じるのですが、いかにも全身タイツの緑なのでしょうか?(一同笑)ある程度は覚悟していますが、そこは高山さんにお任せします(笑)」
――― 仙田さんは映画と舞台に出演されます。
仙田「この映画を作った時は20代前半でしたが、今後半になったので若さが足りるか心配でしたが、台本見ていると映画を踏襲した内容になっているので、そこはやりやすいですね。あとは4年前を思い出しながら伸び伸びやろうと思っています。映画になかったカッパとのやりとりが舞台では出てくるので、そこは楽しみですね。ずっと4年間カッパの銅像と絡めなかったのがしこりに残っているので(一同笑)」
西村「仙田さんの4年越しのしこりを解消しないといけないので、確かに使命は重いですね! まだ全貌が明らかになっていないのですが、それを早く知った上で役作りならぬ“カッパ作り”をしたいと思っています(笑)。元々、コメディは大好きですし、映画でも一番観るジャンルです。他の舞台でもオネエ系やオタクといった飛び道具的な役回りが多かったので、今回はカッパか!とすぐに受け止められました」
――― 公演前にYouTubeやSNSでの積極的な情報発信をされています。
高山「今は多くの方がYouTubeで情報を得ているので、そこを通してチームエヌズって何をやっているんだろうと興味を持ってもらうことが目的で、そこから本番を観てみようかと思ってもらえたら成功ですね。スマホから劇場へ!を目標にしているので、YouTubeでチームエヌズで検索してもらって、映画の予告編も含めて事前に目を通してもらえるとより作品が楽しめると思います」
――― 最後に読者にメッセージをお願いします。
西村「本作では映画を挟む舞台がより重要になってくると思うので、どう攻めの演技を出来るかがポイントになりますが、お客さんに新しい手法のイリュージョンをお届けできたらと思っております」
御縁「もう面白いということは確実なので、これから舞台を楽しもうという方にはうってつけの作品です。私たちとしては、いかにしてお客さんをこの世界に没入させることができるか。この世界の目撃者となってもらうように全力を尽くします。この作品が舞台の世界にはまるきっかけになってくれたら嬉しいです!」
仙田「自分の中では4年越しという思いが大きいですが、同じ役をまたやる経験はそれほど無いと思います。映画祭でも色んな賞を取っている良い作品なので、またそこに出させてもらう楽しみはあります。映画の世界観や余韻をさらに広げてくれる舞台を是非楽しんでください!」
高山「キャラクターが多彩なので、1人でもお気に入りのキャラクターを見つけて欲しいですね。エネルギッシュでつきぬけたコメディなので皆さんに楽しかったなという気持ちで帰って欲しい、その一言です。色んなことに挑戦する劇団を自負しているので、これから注目してもらいたいです。是非劇場でお待ちしております!」
(取材・文&撮影:小笠原大介)
※本インタビューは2020年3月初旬に実施されました。