幼子を抱えつつチャンピオンを目指す女子プロレスラーの姿を描いた、つかこうへい作品『リング・リング・リング』に現役プロレスラーも多く所属する劇団水色革命が挑む。これまでさまざまな劇団が上演をし、映画化もされた本作。1991年の初演時に“長与千種役”として主演した長与千種が今回、スーパーアドバイザーとして本公演をサポートする。劇団を主宰するMARU、W主演の岩井杏加、松井珠紗、そして長与千種に意気込みを聞いた。
―――なぜ今回、つかこうへいさんの『リング・リング・リング』を選ばれたのですか。
MARU「劇団水色革命とは別に、コルバタという舞台をやっていまして、昨年9月の公演『改札の前でアナタを拾いました』を長与さんにご覧いただきました。その際に『つかさんの『リング・リング・リング』をやってみたら?』とお声がけをいただいて。最初は『自信ないなぁ』と思っていたのですが、最終的には『よし、やろう』と決断に至りました」
長与「それまで自分は、つかさんの舞台か友達が多い宝塚歌劇団の舞台しか観たことがなかったのですが、私が代表を務めるプロレス団体の所属選手が客演させてもらっていたので、どんな芝居をするのかなと軽い気持ちで観に行きました。ストーリーの設定も好きだったのですが、女子プロレスラーがここまでやれてしまうのかと。衝撃を受けましたね。
そして、元女子レスラーでありながら、今は演劇界に身を投じていらっしゃるMARUさんは『リング・リング・リング』という作品をどう料理してくださるのかな。そんな思いが膨らみました。絶対彼女たちにやってほしいと思ったし、絶対できると思ったんです。私が主演した初演の時とはまた違う、令和版の『リング・リング・リング』を観たいと思います」
―――改めて、長与さんにとって、つかさんはどんな存在でしたか。
長与「1日9時間ほどの稽古が2ヶ月間続き、とにかく厳しい稽古でしたし、本番当日でも毎日のようにセリフが変わりました。ようやく千秋楽で“完結”した舞台でした。何も演劇のことを知らなかったので、本当に大変でしたね。
でも、つかさんは、プロレスというジャンルに一切の偏見がない人であり、自分の親父のような存在です。きっとこの舞台も見守ってくださっているような気がします。
―――長与さんは本公演にどういう形で関わられるのでしょうか。
長与「スーパーアドバイザーという肩書ですが、初演の時につかさんがどんな感じで稽古をしていたのかなどをお話ししています。私の話が何かの参考になれば良いなと思っているぐらいで、実際の作品づくりはMARUさんに一任しています。演劇は進化させないと面白くないし、良い意味でお客さんを心地よく裏切ることも必要だと思うので」
―――現在の演出プランの構想はどのようなものでしょうか。
MARU「今回は役者チームとプロレスチームの2チームがあります。顔合わせの時に、みなさんのバランスを見て色々と決めようと思っていて。自分にしかできないことを探している最中です」
―――岩井さんと松井さんはW主演ですね。改めて意気込みをお聞かせください。
岩井「配役を発表された時は、とても緊張しました。長与千種さんの役ということで、緊張もありますが同時にワクワクドキドキしています。私は役者でプロレスラーではないのですが、プロレスラーとして舞台で生きられることが今からすごく楽しみです」
松井「長与さんがご覧になったコルバタの舞台に自分も出演していて、長与さんがMARUさんにお話しされているところも聞いていました。その時から絶対に主演をやりたいなと思っていました。役者としてもプロレスラーとしても1番下の自分が主演をやらせていただくということで、プレッシャーもあるのですが、これ以上の経験はないなと思いますし、役者としてもプロレスラーとしても成長できる素敵な機会をいただけたと思っています」
―――最後に、観にきてくださるお客様にメッセージをお願いします!
松井「演劇もプロレスもどちらもやっている人間として、演劇の素晴らしさを伝えると同時に女子プロレスの魅力も伝えられたらなと思います」
岩井「役者もいて現役のプロレスラーもいる、劇団水色革命でしかできない作品だと思います。ぜひ観にきて欲しいです!」
MARU「つか作品の空気感に、これまで自分がやってきたものを加えていきたいですね。そして、長与千種さんというカリスマ的存在のことも伝えたい。いっぱいあります、伝えたいことが」
長与「プロレスラーは4面の世界、役者は1面の世界で生きています。どこから観られても怖くない女たちと、1面で観せたら凄いパワーのある女たち。この2つが合わさることで、ハイブリッドな演劇を観せられると思うんです。どんな舞台を観せてくれるのか、とても楽しみですね。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあって、色々なことがありましたけど、“ここから始まる。”そんな予感がします。
(取材・文&撮影:五月女菜穂)