『文豪とアルケミスト』などで知られるイシイジロウ氏が原作・世界観監修を務めるボードゲーム『ドラゴンギアス』がオリジナルストーリーで2021年4月に朗読劇として展開する。 手掛けるのは映像演出によるデジタル技術と、アナログな演出による生の演劇のパワーをマッチングさせる演劇プロジェクト「アメツチ」。プロデューサーの安藤匠郎、主宰・演出・脚本の山田英真、そして今作で主人公エリックを演じる小南光司、騎士団長のヘンリーを演じる小坂涼太郎に話を聞いた。
朗読劇でも本格的な衣装! 映像との融合にも注目
―――オリジナルストーリーということですが、原作との違いや見どころは?
安藤「7人の騎士が1人の魔女を守る、という設定はそのまま、原作のボードゲームと同じ世界に存在する別の国のお話として上演します。文化も違えば、衣装も違うので、1つのスピンオフストーリーのような気持ちで楽しんでいただければと思います」
山田「こういうご時勢の中で演劇をやることに対して思うことは色々あります。ただ自分たちではどうしようもできないものと立ち向かっている今だからこそ、ドラゴンという未知の生き物に立ち向かわなければいけなくなった騎士たちと魔女がどうするのか、ちょっと大げさですけど、その生き様を見てほしいという気持ちもありますね。」
―――“ビジュアル朗読劇”と銘打っていますが、どのような演出を予定されていますか?
安藤「特殊なスクリーンを駆使して、例えば炎の中に登場人物が立っているように見えるような演出などを考えています。」
小南「え、そうなんですか!? すごい、テンション上がりますね!」
安藤「観ている側も、プロジェクションマッピング以上に、より映像とキャストとの一体感を味わえるのではないかと思います。それから衣装も朗読劇といいつつ本格的なので、そういった意味でも“ビジュアル朗読劇”となっています。」
―――ボードゲームが原作ということですが、キャストのお二人のボードゲーム経験は?
小南「小学生の頃に“ダイヤモンドゲーム”をやっていました。星型の盤面上で駒を取り合うやつ。」
小坂「ああいうのがボードゲームか。ボードゲームってどこからどこまで? 人生ゲームも?」
小南「広義ではそうじゃない? オセロとか将棋もボードゲームといえばそうなのかな。」
小坂「だったら昔は家族とよくやってたかな。一緒にやってくれる人がいないとなかなかやらないからなぁ。最近でもやるアナログゲームだと……“人狼”はカードゲームだからボードゲームではないですよね?」
安藤「ボードゲーム展で“人狼”も見かけるけどね。」
小坂「定義が難しい(笑)。でも『ドラゴンギアス』みたいなタイプのボードゲームは未経験です!」
小南「自分も! さっき実物も触らせてもらったけど、この朗読劇ってこの盤上の駒が実際に動く、みたいなことだよね。すごくテンション上がります! ビジュアル撮影もこれからなので、どんな衣装になるのかなぁと。」
安藤「さっき言った通り、原作とは別の国の話になるんだけど、原作のイシイジロウさんにガッツリ監修してもらっているからね。キャラの名前は彼(山田)が考えたんだけど、この名前だとこの世界観には合わないねとか、この名前はちょっと北欧っぽいから衣装も北欧寄りにしようとか、色々ディスカッションをさせてもらって。この衣装だとちょっと機能性が……とか、朗読劇なのに(笑)」
小南「そうなんですね! 楽しみ!」
朗読劇の意外なルーツとストレート舞台とは違った魅力
―――騎士になって魔女を守る、という設定にやはり男性としては憧れるものでしょうか?
小南「憧れますよ! (小坂に)ねぇ、さっきから僕らの温度差すごくない(笑)?」
小坂「憧れるけどさ、現実的に考えるとあまりそういうことってないじゃん。」
小南「だから憧れるじゃん! アニメやゲームが大好きだからさ! そういうのやっぱりテンション上がるんだよ〜。」
小坂「俺強い系ね。」
小南「でも僕の演じるエリックはヒーラー(※治療や回復の役割を担うキャラクター)なんです(笑)。主人公がヒーラーってちょっと意外だけど、チームの要だとは思うから頑張らなきゃ。騎士団長も意気込み聞かせて。」
小坂「ヘンリーはしっかりしているし、頼もしい団長なんですけど、実はまだ18歳なんですよ。だからふとした時に年相応な部分も出せたら面白いのかなって思います。ひとつ気になるのが、普通に舞台として上演しても面白そうなクオリティだからこそ、朗読劇として上演することにどんな意味を持たせられるかなって。」
小南「確かにね。つい動きたくなっちゃいそうなお話。」
小坂「そう。だからこそ、それでも朗読劇にして良かった!って思えるような作品にしたい。」
―――コロナ禍で朗読劇というコンテンツも以前より増えたようにも感じますが、ストレート舞台と朗読劇の違いは?
小坂「今まで当たり前だったことにちょっと特別な意味を持たせられるのが面白いなって思っています。例えば、舞台では向かい合って話すのが当たり前ですけど、朗読劇は台本を片手に持ちながらのお芝居になるから、大事な台詞を言う時だけ、相手の方に身体を向けたり、客席の方に目線を向けたり。」
小南「目線ひとつでも効果的に使えるよね。僕は朗読劇でも、結構動きがある作品に出たことがあって、ひとくちに朗読劇といっても色々なパターンがあるなって思います。」
小坂「朗読劇の定義ってあるんですか?」
山田「難しいね。リーディングの劇って、もともとは作家が自分の作品をプロデューサーや演出家にプレゼンするために、無名の役者さんたちを使って行っていたものが起源らしくて、そこから盛り上がってひとつの演劇ジャンルとして確立したって聞いているんだけど。」
小南・小坂「えぇー!」
山田「今回は映像と演者の融合も見どころですが、朗読劇ということで、“言葉の力”でもお客様の想像力を掻き立ててほしくて。映像作品と違って、舞台では「わあ、海だー!」って言ったらそこは海になっちゃうからね(笑)。さらに原作が“ボードゲーム”なので、それも生かした朗読劇に仕上げたいなと思います。」
―――今回の朗読劇『ドラゴンギアス』には舞台で活躍中の皆様だけでなく、河本啓佑さん、梶原岳人さんなど人気声優の方々も出演されますが、その意図とは?
安藤「自分自身も元々映像の業界にいたのもあり、他業種を混ぜて作品作りがしたい人間なんですよ。色々なことを期待していますが、声優さんのファンの皆さんに舞台俳優の方々が見出されたら嬉しいし、その逆もしかりだなと。」
小南「ドキドキします。声優さんって身体を動さなくてもすごく熱量のある芝居をされますよね。声に全部の熱量が乗るというか。」
小坂「すごいよね。ご時世で稽古期間は短いですが、色々学びたいです。良い化学反応が生まれたらと思います。」
―――最後に、作品を楽しみにお待ちの皆様に一言ずつお願いします。
小坂「4月の公演なのでまだ情勢は見えないですが、一旦不安な気持ちは捨てて、一生懸命取り組んで、楽しんでいきたいと思っています。興味がある方はぜひ公演情報をチェックしてください!」
小南「こういった情勢の中で舞台をやらせていただくことには必ず意味があると思っていますし、僕らは今この時だからこそ伝えたいこと、観てほしいものがあって舞台の上に立っています。大きな声で観に来てくださいとは言いづらい情勢ではあるのですが、観劇後に来てよかった!と言っていただけるような作品に出来るよう頑張りますので、楽しみにお待ちいただけると嬉しいです。」
安藤「このご時世、エンタメは本当に必要なのかということも言われますが、僕は逆にこういう状況だからこそ、エンタメというのは必要なものだと思っています。僕らが前を見て進んでいる姿を作品を通じてお客様に観て、感じていただけたら幸いです。」
山田「ポジティブな考え方をすれば、このコロナ禍を機に演劇業界は一度リセットされるのかなと。時代に合わせて変わっていくものも必要だし、変わらないものも必要だと思います。今回は映像演出も取り入れたビジュアル朗読劇となっていますが、演劇のアナログならではの良さもまた再認識してもらいたいと思っているので、ぜひ共にそれを体感していただきたいです。」
(取材・文&撮影:通崎千穂)