東野圭吾の『虚像の道化師』(文春文庫)に収録されている『演技(えんじ)る』をもとに、堤泰之が脚本・演出を手がける音楽劇『ガリレオ★CV』。 “CV”というのは、「Crown」と「Virtual」の頭文字から名付けたそう。
犯行現場は、小さな劇団の稽古場。被害者は劇団の演出家である駒井良介(安里勇哉)。劇団員たちに容疑がかかるが、みんなアリバイがある。捜査に行き詰まった刑事・草薙俊平(加藤良輔)は、帝都大学准教授・湯川学(久保田秀敏)の知恵を借りようとして――。
サスペンスの要素もあるが、そこで蠢く人間関係の描写に力点が置かれる模様。出演する安里と久保田に意気込みを語ってもらった。
――― 原作を読まれた第一印象を教えてください。
安里「東野圭吾さんの作品はいくつか読ませてもらっていて、もちろん『ガリレオ』シリーズはテレビドラマなどでも拝見しました。今回の『演技る』は初めて読んだのですが、小説として楽しかったですね。でも、僕がどう舞台上で演じるのかは全く想像つかずにいます(笑)」
――― 特にどういうところが面白いと思われますか?
安里「東野さんの言葉の選び方がすごい。情景がすぐ頭の中に浮かんできて。とはいえ、原作小説はセリフよりも情景描写が多いので、堤さんはこれをどう2時間ぐらいの音楽劇として仕立てるのか。楽しみですね」
久保田「僕は以前、ミステリー小説を原作とした舞台をやったことがあって。演じながら謎を解くのはすごく難しかった。セリフを言うだけなら簡単なのですが、リアルに頭の中で目の前の事柄に対して推理していかねばならず、苦労したなという思い出があります。今回はさらに音楽劇なので、どうなっていくのだろう。一筋縄ではいかない作品になる気がします。新しい挑戦状を突きつけられたなと感じています」
――― 『ガリレオ』シリーズは、原作やテレビドラマなどの影響である程度お客様もイメージをお持ちだと思います。その辺りの難しさは感じますか?
久保田「原作ものの作品は、必ず固定概念やイメージをお客様がお持ちじゃないですか。僕は1回観てしまうと、それが頭にこびりついて離れなくなってしまうので、なるべく原作を観ないようにしているタイプなんですけど、この『ガリレオ』については、湯川学=福山雅治さんというものがある。それを無理に壊そうとするのも違うと思うので、まずは僕自身がちゃんと湯川として舞台で生きる。相手と会話する―― そこで生まれるお芝居を広げていくことが、根本的に一番大切なことかなと思います」
――― おふたりは学年が一つ違うものの、1987年で同世代。今回が初共演です。
安里「そうなんです。華の87年組です(笑)。でも僕は被害者の役なので、早々に死ぬでしょうから、もしかしたら久保田くんとは絡まないことも十分あり得ますよね!? 何か演劇的な演出を取り入れてもらって、どうにか絡んでいきたいと思いますが(笑)」
久保田「同年代の方たちと芝居をすることは、自分の立ち位置を確認したり、刺激しあったりできるので、単純に嬉しいですね。もちろん上の世代や下の世代ともお芝居することも好きなんですけど、『この世代で、こんなお芝居ができるんだ』と思わせられたら。底力を見せていきたいと思いますね」
――― せっかくの機会なので、お互い何か質問してみたいことなどあれば!
安里「お酒は飲まれますか?」
久保田「はい。昨日も一昨日も飲んでいました(笑)」
安里「そうなんですね。僕はハイボールが好きなんですけど、何か好きなお酒は?」
久保田「福岡出身なのに焼酎が飲めないんですよ。焼酎以外なら何でも」
安里「福岡なんですね。僕は沖縄出身で、こんな感じでゆっくりした時間の中で生きています(笑)」
久保田「いわゆるウチナータイムですね(笑)。沖縄の人は結婚式でも平気で待ち合わせの時間に1、2時間遅れてくると聞いたのですが、本当ですか?」
安里「本当です(笑)。結婚式と遊びの予定はだいたい遅れますね。本来出ないといけない時間に、ようやく準備をしだすぐらいです(笑)。東京に出てきた時は苦労しましたね。今は余程の遅刻はないと思います」
久保田「なるほど。じゃあ沖縄の人を誘う時は1時間前の時間を伝えればいいんですね(笑)。いやはやお話を聞いていて思いましたが、東京の人が追われすぎているのかもしれませんねぇ」
――― 楽しいお話、ありがとうございます。最後に、公演を楽しみにされているお客様やファンの方にメッセージをお願いします!
安里「原作を読んで結末を知っていたり、テレビドラマのイメージを強く持たれていたりするお客様もたくさんいらっしゃると思います。舞台上で繰り広げられる人間模様や舞台ならではの“生”感とともに、東野圭吾作品の世界観をお届けしたいです。何か心に残ったら嬉しいです」
久保田「誰もが知っているであろう『ガリレオ』シリーズの湯川学を演じることを光栄に思います。コロナ禍でなければ、お客様も何も気にせずに作品を観に来ることができたはず。まずは体調と感染症に気をつけながら、無理せずに、観に来れる範囲で来てほしいです。いらしていただいた暁には、必ず満足させられるほどの作品を提供します。ぜひ楽しんでください!」
(取材・文:五月女菜穂 撮影:友澤綾乃)